「いじめられた時、音楽に救われた」そんな僕が歌う意味
伊東歌詞太郎・つらい経験を乗り越えて
誰かの人生がプラスになるよう、歌い続けて
■いじめられるって、めちゃめちゃに傷つけられる
いじめられるって、ものすごく傷つけられることなんですよ。めちゃめちゃに傷つけられる。
だから、いじめがどれほど人を傷つけるのかというのは、いじめをしている側、もしくはいじめを受けていない人たちより、僕はたくさん知っているつもりです。
僕の思考の根幹に、「他人の立場になって考える」という考えがあります。いじめの経験はまさにそうです。あれだけつらい思いをしたから、同じことを人には絶対にできない。人が何をされたら傷つくのか。それが分かってから、僕は人に優しくできるようになりました。
僕にとって、音楽活動をする意味は色々あるけど、そのひとつが誰かの人生をプラスにすること。1ミリでも、10メートルでも、とにかくプラス方向にする。そういう音楽を作っていくことが、僕が生きるひとつの意味だと思うんです。
ライブに来てくれた中学生の女の子が「歌詞太郎さんのライブをきっかけに外に出られた」と言ってくれたことがありました。それまで、引きこもっていた子が、僕の曲をきっかけに部屋を出られるようになった。それを聞いた時は、すごくうれしかったな。
いじめられた時、僕は音楽を聴いたり歌ったりして、落ち込んだ気分を変えることが何度もできた。音楽って、特効薬だと思うんですよ。そういう音楽を作れたらミュージシャンとしては本望です。
僕の場合はいじめだったけど、他の原因で、しんどい思いをしている人もいると思います。そうした人たちに、甘い言葉は言えないです。だって、つらいもん。「今はつらいけど、この先いいことあるさ」とは絶対に言いたくない。そんなこと言われたら、「お前このつらさ分かんの?」って当時の僕だったら思いますよ。
小学生の時、僕のつらさを分かってくれる人はいなかった。でも、僕には音楽があった。音楽が僕のことを分かってくれたと勝手に思っていました。
ゲームでも読書でも、あなたにとって居心地がよければ何でも構わない。見つけてみようなんて無責任なことは言えないけど、あなたの居場所が見つかるよう、僕は祈っています。
伊東歌詞太郎(いとう・かしたろう)
狐のお面がトレードマーク。抜群の歌唱力を武器にネット音楽シーンに登場、数十万のSNSフォロワーと繋がりながら投稿した動画の総再生数は8000万回を超え、アルバムは3作連続でオリコンランキングTOP10入りした。声帯結節の手術から2018年7月に復帰し、全国路上ツアーとホールコンサートを開催中。様々な問題を抱えた家庭や子どもと家庭教師の交流を描く初の小説『家庭教室』(KADOKAWA)を2018年5月に出版 。
公式サイト:https://www.kashitaro.com/
Twitter:@kashitaro_ito
Blog:https://lineblog.me/itokashitaro/
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『生きづらさを抱えるきみへ』
著者:withnews編集部
2014年に朝日新聞社がスタートしたニュースサイト「withnews」内の1コーナーが「#withyou」です。この#withyouは2018年4月に始まった「生きづらさを抱える10代」に向けた企画で、「いじめ」や「不登校」、「DV」などを経験したことのある著名人(タレント、ミュージシャン、YouTuber、クリエイター等)が自らの体験談をサイトに掲載したものです。その体験談をひとつにまとめたのが本書。新生活が始まる中、「学校に行きたくない」「死にたい」といった悩みを抱え苦しむ人に、著名人たちが「自分も学校にいかなかった」「自分も不登校生活をしていたけど、今はしっかりと生活できている」「学校に行くだけがすべてじゃない」「好きなことをずっとやり続けていれば大人になっても暮らしていける」といった“安心できる”提案をしています。学校や友達付き合いに悩んでいる人に“学校に行きたくなければ行かなくても全然大丈夫”“今の時代、生きていく道はたくさんある。自ら死を選ばないで”という輪を広げていくことをいちばんの目的とした一冊です。